東京高等裁判所 平成7年(行コ)25号 判決 1995年11月29日
控訴人
藤岡町長
高際高徳
右訴訟代理人弁護士
若狭昌稔
同
大貫正一
被控訴人
青木精密工業株式会社
右代表者代表取締役
青木淳
右訴訟代理人弁護士
大久保和明
主文
一 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
二 被控訴人の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。
事実
第一 申立て
一 控訴人
主文と同旨
二 被控訴人
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
第二 主張
当事者の主張は、次のとおり訂正、付加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。
一 原判決三枚目表二行目の「本件加算金決定」を「本件加算金の決定」と改める。
二 原判決四枚目裏一三行目の「いてる」を「いる」と改める。
三 原判決一〇枚目表一〇行目の次に改行して
「仮に法六〇九条三項の適用があるとしても、不申告加算金の率が一〇〇分の五の割合となるのは提出した申告書に記載されている税額に係る部分のみであり、全体が一〇〇分の五になるわけではない。」
を加える。
第三 証拠
原審記録中の書証目録に記載のとおりであるから、これをここに引用する。
理由
一 当裁判所は、被控訴人の本訴請求は、すべて理由がなく、棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正又は付加するほかは、原判決理由説示のとおりであるから、これをここに引用する。
1 原判決一二枚目表八行目の「また、」の次に「乙第八号証及び」を、同裏四行目の「乙」の次に「第九、」をそれぞれ加える。
2 原判決一三枚目裏九行目から同一五枚目表三行目まで次のとおり改める。
「1 ところで、法六〇九条二項は、特別土地保有税について、申告書の提出期限までにその提出がなく、右提出期限後に同項一号ないし三号に掲げる申告書の提出、決定又は更正があった場合には、その提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合を除いて、当該申告、決定又は更正により納付すべき税額に一〇〇分の一五の割合を乗じて計算した金額に相当する不申告加算金を徴収すべきものと定めているが、同条三項は申告書の提出期限後にその提出があった場合において、その提出が当該申告書に係る特別土地保有税額について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、「当該申告書に係る税額」に係る前項の不申告加算金額は、「当該税額」に一〇〇分の五の割合を乗じて計算した金額とすると定め、提出期限後における申告書の提出が更正のあることを予知してされたものでないときは、「当該申告書に係る税額」に係る部分についての不申告加算金は当該税額の一〇〇分の五の割合を乗じて計算した金額に軽減することとしている。法六〇九条三項が、このように、特別土地保有税の不申告加算金について、申告書の提出期限後にその申告がされた場合においてそれが更正があるべきことを予知してされたものでないときは、不申告加算金の軽減措置をとることとしているのは、特別土地保有税が申告納税制度をとっている趣旨にかんがみ、申告書の提出期限後においてもできるかぎり自発的な申告とそれに基づく納税を促そうとするにあるものと解される。したがって、その法意にかんがみれば、右不申告加算金の軽減措置の適用が受けられるのは、更正があることを予知することなく自発的に申告書が提出された場合におけるその自発的に提出された当該申告書に係る税額、すなわち、当該申告書により申告された税額部分に限られ、更正により増額された税額部分に及ばないことは、当然のことといわなければならない。法六〇九条三項が、同項の軽減措置が適用される場合の不申告加算金の計算の基礎となる税額を、同条二項の場合のように「申告、決定又は更正により納付すべき税額」とせず、「当該税額」、すなわち、「当該申告書に係る税額」と定めているのは、右の趣旨によるものである。
2 そして、本件の場合、前記争いのない事実並びに乙第一一号証及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、本件土地について平成四年九月二一日付けで本件特別土地保有税申告をしたが、その申告書の納付すべき税額欄は空白となっていたこと、その趣旨は、被控訴人が本件土地について特別土地保有税は非課税とされるべきであるとの見解に立ち、納付すべき税額はないこと、すなわち、税額は零であることを表明したものであることが認められる。そうすると、被控訴人の提出した右申告書により申告された本件土地の特別土地保有税の税額は零であるから、被控訴人の右申告書の提出が「更正があるべきことを予知してされた」か否かを論ずるまでもなく、被控訴人は、法六〇九条三項の規定による軽減措置を受ける余地はなく、本件更正により納付すべきものとされた特別土地保有税額の全額について同条二項に定めるところにより不申告加算金の徴収を免れないものといわざるを得ない。
したがって、法六〇九条三項の規定による不申告加算金の軽減措置をしなかった本件加算金の決定に、なんら違法はない。
四 そうすると、本件更正及び本件加算金の決定の取消しを求める被控訴人の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、すべて理由がなく、棄却を免れない。」
二 よって、原判決中被控訴人の請求を一部認容した部分は不当であり、本件控訴は理由があるから、原判決中の右部分を取り消し、右部分に係る被控訴人の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 石井健吾 裁判官 吉戒修一 裁判官 大工強)